共有の見直し(令和5年4月1日施行)
1.共有物の「管理」の範囲の拡大・明確化
① 軽微変更についての規律の整備
共有物に変更を加える行為であっても、形状又は効用の著しい変更を伴わないもの(軽微変更)については、持分の過半数で決定することができる。(法251条1項、252条1項)
※「形状の変更」:その外観、構造等の変更
「効用の変更」:その機能や用途の変更
例)共有土地の分筆等の登記も、持分の過半数によって申請が可能
② 短期賃借権等の設定についての規律の整備
次の期間を超えない短期の賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(賃借権等)の設定は、持分の過半数で決定することができる。(法252条4項)
(1)樹木の植栽又は伐採を目的とする山林の賃借権等 [10年]
(2)(1)に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 [5年]
(3)建物の賃借権等 [3年]
(4)動産の賃借権等 [6か月]
2.共有物を使用する共有者がいる場合のルール
① 管理に関する事項の決定方法
共有物を使用する共有者がある場合でも、持分の過半数で管理に関する事項を決定することができる。(法252条1項後段)
ただし、その決定が共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その共有者の承諾を得なければならない。(法252条3項)
※「特別の影響」:共有物を使用する共有者に受忍すべき程度を超えて不利益を生じさせること。
② 共有物を使用する共有者の義務
〇 自己の持分を超える使用の対価を償還する義務(法249条2項)
〇 善良な管理者の注意をもって、使用する義務(法249条3項)
3.賛否を明らかにしない共有者がいる場合の管理
賛否を明らかにしない共有者がいる場合には、裁判所の決定を得て、その共有者以外の共有者の持分の過半数により、管理に関する事項を決定することができる。(法252条2項2号)
4.所在等不明共有者がいる場合の変更・管理
所在等不明共有者がいる場合には、裁判所の決定を得て、
① 所在等不明共有者以外の共有者全員の同意により、共有物に変更を加えることができる。(法251条2項)
② 所在等不明共有者以外の共有者の持分の過半数により、管理に関する事項を決定することができる。(法252条2項1号)
5.共有者の管理者
① 選任・解任は、共有物の管理のルールに従い、共有者の持分の過半数で決定。共有者以外を管理者とすることも可能。
② 管理者は、管理に関する行為(軽微変更を含む)をすることができる。軽微でない変更を加えるには、共有者全員の同意を得なければならない。
③ 管理者は、共有者が共有物の管理に関する事項を決定した場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。(法252条1項、252条の2)
6.共有の規定と遺産共有持分
遺産共有状態にある共有物に共有に関する規定を適用するときは、法定相続分(相続分の指定がある場合は、指定相続分)により算定した持分を基準とする。(法898条2項)
7.裁判による共有物分割
① 賠償分割に関する規律の整備
〇 裁判による共有物分割の方法として、賠償分割が可能であることを明文化(法258条2項)
〇 現物分割、賠償分割のいずれもできない場合、又は分割によって共有物の価格を著しく減少させ
るおそれがある場合に、競売分割を行うこととして、検討順序を明確化(法258条3項)
② 給付命令に関する規律の整備
裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払い、物の引渡し、登記義務
の履行その他の給付を命ずることができることを明文化(法258条4項)
8.所在等不明共有者の不動産の持分の取得
共有者は、裁判所の決定を得て、所在等不明共有者(氏名等不特定を含む)の不動産の持分を取得することができる。(法262条の2)
〇 所在等不明共有者は、持分を取得した共有者に対する時価相当額請求権を取得
〇 遺産共有の場合は、相続開始から10年を経過しなければ、利用不可(法262条の2第3項)
9.所在等不明共有者の不動産の持分の譲渡
裁判所の決定によって、申立てをした共有者に、所在等不明共有者の不動産の持分を譲渡する権限を付与する制度を創設(法262条の3)
〇 譲渡権限は、所在等不明共有者以外の共有者全員が持分を譲渡することを停止条件とするものであ
り、不動産全体を特定の第三者に譲渡する場合でのみ行使可能。
〇 所在等不明共有者の持分は、直接、譲渡の相手方に移転する。
〇 所在等不明共有者は、譲渡権限を行使した共有者に対する不動産の時価相当額のうち持分に応じた
額の支払請求権を取得する。(法262条の3第3項)
〇 遺産共有の場合は、相続開始から10年を経過しなければ、利用不可(法262条の3第2項)