相続等により取得した土地所有権の国家への帰属に関する法律が、令和5年4月27日に施行されます。
この法律は、土地利用ニーズの低下等により、土地を相続したものの、その土地を手放したいと考える方が増加しています。また、相続を契機として、土地を望まず取得した所有者の負担感が増しており、管理の不全化を招いています。
そこで、所有者不明土地の発生を抑えるため、相続や遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により土地の所有権を取得した方が、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする制度が創設されました。
1.国庫帰属までの流れ
①事前相談
対面又は電話での相談は、予約制により、具体的な相談を受け付けます。所在する土地を管轄する法務局(本局)へ相談の予約を取ります。国に引渡したい土地が遠方にある場合、お近くの法務局(本局)にも相談が可能です。
令和5年2月22日から、法務局(本局)において、相談を開始しています。
②申請書の作成・提出
審査手数料(今後、政令で定められる)分の収入印紙を貼り付けた申請書を作成し、所在する土地を管轄する法務局(本局)の窓口に提出します。(郵送での申請も可能)
③要件審査
法務大臣(法務局)において、提出された書面を審査し、申請された土地に出向いて実地調査を行います。
④承認・負担金の納付
審査を踏まえ、帰属の承認・不承認の判断の結果について、申請者に通知が送付されます。帰属が承認された場合、申請者は、通知に記載されている負担金額を期限内(負担金の通知が到達した翌日から30日以内)に日本銀行に納付します。
⑤国庫帰属
申請者が負担金を納付した時点で、土地の所有権が国に移転します。所有権移転登記は国において実施します。
2.帰属ができない土地
土地の管理コストの国への不当な転嫁やモラルハザードの発生を防止するため、国庫帰属の要件が法令で具体的に定められています。次のいずれかの要件に該当する土地については国庫帰属ができません。(詳細略)
1)申請ができない土地(申請の段階で直ちに却下となる土地)
①建物の存する土地
②担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
③通路その他の他人による使用が予定される土地が含まれる土地
④土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地
⑤境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地
2)帰属の承認ができない土地(審査の段階で該当すると判断された場合に不承認となる土地)
①崖(勾配が30度以上であり、かつ、高さが5メートル以上のもの)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
②土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
③除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
④隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
⑤通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地
3.負担金
負担金は、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した、10年分の土地管理費相当額としています。
承認申請があった土地は、「宅地」、「農地」、「森林」、「その他」(雑種地、原野等)の4種類に区分され、この区分に応じて納付が必要となる負担金が決定します。
負担金の計算に用いる地積は、登記記録上の地積を基準とします。現況の地積で負担金を計算したい場合は、地積更正又は地積変更の登記を行うことで、変更後の登記記録上の地積を基準とすることができます。